北欧神話-3 アース神族とヴァン神族

どうも、元山狐(もとやまきつね)です。

北欧神話において、神々は2つのグループに分けることができます。

ひとつはオーディンらを中心としたアース神族。
もう一つは、魔法を得意としたヴァン神族です。

この2種族間の戦争が北欧神話における初の戦争となります。

今回はそんなアース神族とヴァン神族が争うことになった経緯と、終決までの流れを書いてみたいと思います。




魔女グルヴェイグがきっかけで戦争が勃発

アース神族がアースガルズに住み始めた頃、彼らは多くの財産を持ち、明るく華やかな生活をしていました。

そんなある日、魔女グルヴェイグがアースガルズを訪れました。

彼女はアース神族に、セイズ呪術を教えました。
セイズ呪術は道具を使用して、魂を操り、魂を体から出して自由に移動をしたり、未来予知をしたりする魔術でしたが、使用の際には肉体的な快楽が伴うものでした。

アース神族の女神たちは、この呪術にはまり込んでしまい、堕落してしまいました。

それを問題視したオーディンらは、グルヴェイグを槍で突き刺して殺そうとしました。

3度に渡って殺されかけたグルヴェイグですが、不死身の体を持つグルヴェイグは、その度に蘇りました。
(最終的にはやっとのことで肉体を焼き尽くしたものの、その心臓だけは残り、それをロキが喰らったという説もあります。)

この事件がきっかけで、アース神族とヴァン神族は仲違いして、戦争が勃発したと言われています。

グルヴェイグがヴァン神族と発覚して、アース神族がヴァナヘイムに侵攻を始めた。
とか、
グルヴェイグの処遇を聞いたヴァン神族らが怒って、戦争を始めた。
など諸説ありますが、グルヴェイグが戦争のきっかけになったことには違いがないようです。

また、グルヴェイグの名は「黄金の力」を意味しています。

それに関連して、グルヴェイグ=黄金を擬人化したもの(黄金への執着をもった神々が争いを始めた)
という解釈もあったり、
グルヴェイグを貫いた槍=アース神族らの男性器=集団レイプであり、グルヴェイグをアース神族への花嫁として送り込んだヴァン神族が怒った。
といった一風変わった解釈もあって、このあたりも妄想心が刺激されます。

しかし、戦争の決着はつかなかった

数に勝り、物理的な攻撃を得意とするアース神族。
魔法を得意として、アース神族を苦しめるヴァン神族。

長年に渡り両族は争いました。

はじめはヴァン神族が優位で、アースガルズの高い城砦を突き崩すところまで来ましたが、アース神族もそれを食い止め前進、ヴァナヘイムにも似たような損害を与えました。
そんなカンジで戦いは、あちらこちらへと荒れましたが、一向に決着がつきません。

やがて、戦うことに疲れ果てた神々。
両属の指導者同士が会合して和解することになりました。

和解の証として交換された人質

和解の証として、両族からそれぞれ「尊い神」を人質として交換することになりました。

ヴァン神族からは
ヴァン神族の指導者ニョルズ
ニョルズの双子のフレイ(息子)とフレイヤ(娘)
がアース神族に送られました。

彼らはアース神族に歓迎されて、偉い司祭に任命されました。
そして、フレイヤはアース神族に、ヴァン神族たちが使う魔法を教えました。

一方、アース神族からは
容姿に優れ、美しく逞しいヘーニル
知恵者のミーミル
がヴァン神族に送られました。

ですが、ヘーニルはミーミルがいないと何もできない無能者でした。
これに怒ったヴァン神族は、ミミールの首を切り落とし、オーディンに送り返しました。

この首を受け取ったオーディンは
「ミーミルの知恵を失うのは惜しい」
と考えて、薬と魔法でミーミルの首だけを生き返らせました。

そして、首だけになったミーミルはヨトゥンヘイムにある「知恵の泉」の番人になりました。

この「知恵の泉」は「ミーミルの泉」と呼ばれています。

Wikipediaから引用
知識を求めて訪ねてきたオーディンは、泉の水を一口飲みたいとミーミルに頼み、代価に片方の眼球を求められ、これに応じたため以来片目となった。
このためミーミルの泉は「戦士の父(オーディン)の担保」とも呼ばれる。

こういった経緯で、オーディンは右目を代償に知恵を得ることになります。

最後に

今回登場したヴァン神族ですが、以降登場することはありません。
ヴァン神族から送られてきたニョルズ、フレイ、フレイヤは今後アース神族として扱われて登場することになります。

今回の戦争で、アースガルズを囲む柵が壊されてしまいました。
以降の話では、この柵を巡って、ずる賢いロキが登場したり、神々と巨人が対立したり、アース神族の神々が起こす様々な出来事を紹介していきたいと思います。

では、最後までお読みいただきありがとうございました。