フェニアンサイクルのエピソードをまとめていきたいと思います。
今回は、フィン・マックールの生い立ちに関するエピソードを書きたいと思います。

フィン・マックールの生い立ちと知恵の鮭

前回の記事で、フィン・マックールは
「神話サイクルに登場した戦いの神ヌァザの孫娘マーナと、フィアナ騎士団長のクールの間に生まれました。」と書きました。

フィンの父は、敵対しているモーナに殺されてしまいます。
フィンの母親は、敵に殺されるのを恐れて森に隠れてひそかに男の子を生み、ディムナと名付け、ふたりの老婆にディムナを託すとチリイの王と結婚しました。

ディムナは金髪で美しかったので、フィン（美しい）と呼ばれるようになり、勇気のある強い若者に成長しました。
そして、知識をつけるためドルイドのフィネガスに弟子入りをしました。

フィネガスは長年「食べれば世界のありとあらゆる知識を得ることができる。」と言われる「知恵の鮭」を捕まえようとしていて、ある時やっと捕まえることに成功します。
フィネガスは、フィンにこの鮭を料理するようにいいつけ、鮭を食べてはいけないと言いつけていましたが、フィンは料理をしている時に、親指を火傷してしまい、指を舐めてしまいます。

フィネガスはそれを聞くと、この知恵の鮭はフィンが食するべき運命だったと考え、フィンに鮭を食べさせました。

知恵の鮭を食べてからのフィンは
「親指を口に入れると、アイディアが浮かび、よい判断ができる。」
という能力を手に入れます。

こうして、勇気と力に加え知識も手に入れたフィンは、父がそうだったように、フィアナ騎士団の団長になりたいと思うようになりました。

そして、ある日1人でターラの王の集まりへ出かけたフィンは、そこで「自分も王に仕えて忠誠をつくしたい。」と述べました。
王はフィンの勇気と立派な態度に関心して、騎士の地位を与えました。

この時、フィアナ騎士団の長は、フィンの父親の仇であるモーナでしたが、モーナは王の意向に異論を唱えることなく、フィンを部下として受け入れました。

フィン・マックールとアイレン

フィンが騎士になって間もない頃、アイレンという恐ろしい化物がターラの人々を殺し、街を脅かしていました。
アイレンは竪琴の魔力で戦士を無力化することができたので、フィアナ騎士団も手をこまねいていました。

フィンは王に「その化物を退治したらフィアナ騎士団長にして欲しい」と申し出ました。
王もそのフィンの申し出に応えたので、フィンは妖怪退治に出かけることになりました。

その際に父クールの従者が、魔の槍を持っていて、フィンに貸してくれました。

夜になると、霧の中から不思議な竪琴が鳴り響いてきて、一つの影がせまってきました。
しかし、フィンには魔の槍の効力があって、竪琴の魔力を無効化すると、無事アイレンを倒すことに成功します。

化物の首を持ってターラに戻ってきたフィンを見ると、王は約束どおりフィンを騎士団長にすることにして、忠誠を誓わせました。
それまでは騎士団長だった、父の仇であるモーナはフィンの部下となり、忠誠を誓うことになりました。

その後のフィンは勇気と賢さに加えて誠実さでもって、全ての人々に寛大なよい団長となり、フィアナ騎士団はよりよく組織化されて栄えることになります。

フィン・マックールと妖精サヴァ

ある日、フィンが騎士たちと狩から帰る途中に一匹の子鹿と出会います。
その子鹿を館に連れ帰り、フィンがふと気づくと美しい娘がいました。

その子鹿はサヴァという美しい娘で、妖精からの求婚を断って魔術で鹿にされてしまったのです。
しかし、別の妖精が哀れんで、フィンの屋敷に入れば魔法が解けるようにしてくれました。

そのことを聞いたフィンは彼女の身の上に同情し、また美しさに惹かれ、一緒に住むようにすすめ、二人は結婚します。

二人は互いに深く愛し合い、幸せな日々が続きますが、ある日北方から敵が攻めてきたので、フィンは7日間戦いに出て館を留守にしました。

フィンが戦いから帰ってくると、そこにはサヴァの姿がありませんでした。
家来にたずねると、フィンが戦いに出ている間に幻影が現れ、サヴァとともに居なくなった。
ということでした。

その日から7年間、フィンは猟犬を連れてサヴァを探しましたが、見つかりませんでした。
探すことをやめた後も、フィンはサヴァのことを忘れることができませんでした。

ある日、フィンの猟犬があまりに吠えるので、その場所に行くと男の子がいました。
男の子は7歳くらい、整った美しい顔立ちで、フィンたちににこやかな笑顔を向けました。

フィンはその二人を館に連れ帰りました。

口がきけるようになってから、語られたその子の話を聞いて、フィンは
「自分とサヴァの子に違いない」
と思い、彼に「オシーン」（子鹿）という名を与え、息子として育てました。

オシーンは勇敢な騎士になり、詩人としても優秀でフィアナ騎士団の物語も大半は彼が語ったもの。とされています。

最後に

かなり簡素なものになりましたが、フィン・マックールが騎士団長になるまでの流れと、息子ができるまでの流れを紹介しました。

この後、いくつかのエピソードを挟んで、フィン・マックールの最期を紹介したいと思います。

では、最後までお読みいただきありがとうございました。