小説・映画「東京島」について(アナタハン島事件をモチーフに創作された作品)

小説「東京島」桐野夏生 著

先日、桐野夏生先の「東京島」という小説を読みました。


この作品は、実際に起こった事件「アナタハン島事件」をモチーフに創作されています。

Wikipediaより引用
アナタハンの女王事件(アナタハンのじょおうじけん)とは1945年から1950年にかけて太平洋マリアナ諸島に位置するアナタハン島で発生し、多くの謎を残した複数の男性の怪死事件。
別名「アナタハン事件」「アナタハン島事件」

とはいえ、アナタハン島事件は70年以上前の事件、この作品のストーリーはオリジナルで、より現代風になっています。

クルーザーで世界一周旅行に旅立った夫婦(隆と静子)が嵐に遭遇し、無人島に漂着するところから物語ははじまります。
そこに与那国島からのブラックな労働から脱出を図ろうとして、台風にあって漂着した若者たち23人。
さらには密航途中のトラブルで、この島に置き去りにされた中国人11人。

この無人島(登場人物たちには「トウキョウ」と呼ばれる)にいる女性は、静子1人。
そんな静子や無人島に流れ着いた男たちが生き抜いていく・・・って話です。

アナタハン島では唯一の女性「比嘉和子」さんは20代半ばで、男性たちも10~20代の若者が中心。
実際の事件の方では、男性たちがほぼ全員、この和子を巡って争うことになっています。

対して、この作品では隆と静子、他の島民とはかなりの年齢差があるようです。
静子は40代半ばで、他の男性は夫隆を除いて10代~20代がほとんど。
この年齢差の設定がとても絶妙だと思っています。

夫の隆は島でのサバイバル生活に適応できないのに、対し静子は蛇の皮を剥いで逞しく生活していきます。
島の男たちはみんな静子に夢中になり、逆ハーレム状態です。

そして夫を差し置き、島の若い男たちとセックスに興じます。
夫は序盤で亡くなってしまうのですが、その後静子は他の男性とすぐに結婚します。

その後も、唯一の女性である静子はモテモテでして、島内で何度か結婚しているのですが・・・。
やがて夫は少数の立候補者から、くじ引きで選ぶようになったり、島内で男性同士のカップルができたり、男性たちの結束により、次第に疎まれるようになり・・・。
女性としてあまり求められなくなっていく中でも、妊娠などを経て再び女王的な扱いを受けたり。
静子の島内での立場の浮き沈みだったり、なんかこのドロドロ具合が個人的にはすごくいい!

他の島民のことは、今回あまり書かないのですが、人物の掘り下げも面白かった。
常に嫌われ者であるワタナベ、後に島の僧侶となる、度々姉の人格に入れ替わるマンタ、終盤で発狂するオラガ、静子とも結婚をした記憶喪失のフリをしたGM・・・。
特にワタナベは亀の甲羅を身に着けて生活していたり、ドラム缶で家を作ったり、何故か中国語を理解し、ホンコン(この作品での中国人たちの呼び方)たちとつるんだり、静子の服を盗み着て女装したり・・・奇行が目立つ印象深い人物です。

またハッピーエンドとも、バッドエンドとも言いづらい終わり方もよかった。
スカっと終わるのも好きなんですけど、こういう何とも言えない気味の悪い余韻もいいですね。
実際に読み終えたのが深夜だったのですが、「・・・・・・さて寝ようか」ってカンジで、読み終えた後何するでもなくすぐに寝ました。

映画「東京島」

この「東京島」は映画化もされているらしく、小説版を読んだ後に、Amazonでレンタルしてみました。


キャストは、静子が木村多江、夫隆は鶴見辰吾、ワタナベは窪塚洋介、マンタ 染谷将太、オラガ 柄本佑などなど・・・結構豪華キャストでした。

小説のイメージに比べて、全体的に人物が美化されていて、ドロドロ感もかなり薄れていました。
ここが人によって意見が割れるだろうけど、「物足りない」と感じる人と、「見やすい」と感じる人に分かれるのかな?
それに小説と映画では、ストーリーが違う部分はあるけど、基本的には小説が忠実に再現されていて、漂流モノとしても十分楽しめる作品だと僕は思いました。

ただ、確実に小説の方が濃いので、映画見た後に小説読んだ方が、堪能できたのかも。
特に、各人物のことについては殆ど説明がないので、特にワタナベの奇行は映画ではただの頭のおかしい人みたいになってたり、マンタは急にオネェになる人みたいになってて・・・個人的にはそこが残念。

最後に

この作家(桐野夏生)さんの作品は過去に「女神記」と「残虐記」という作品を読んでいます。
上記2作品もかなりドロドロしている印象なんだけど、やはり僕には心地よかったんですね。
他にも気になる作品がいくつかあるけど、「奴隷小説」って如何にも気になるオーラを発している作品がありますねw

では、最後までお読みいただきありがとうございました。