ケルト神話について-4 ダーナ神族の神々

今回は前回のあらすじに登場した、「トゥアハ・デ・ダナーン族」(ダーナ神族)の神々を紹介してみます。

僕個人的には、ケルト神話の中ではこのダーナ神族が活躍するところがファンタジー要素が大きくて好きです。
このダーナ神族は、ケルト神話において、唯一神様として扱われている種族でして、その後に出てくる種族やメインとなるキャラクター達は神ではなく、英雄として描かれることになります。



ダヌ

ダーナ神族の祖となる女神。
物語には殆ど出てくることはなくて、固有の神話が存在しません。
さらにどのような外見であったかも伝えられていません。

以前の記事で、ケルト神話には「天地創造」がない。と書きました。

また、ケルトは口伝で伝わってきたので、残っている逸話の大半はローマやギリシア人が文字にしたものです。
なので、本来はあった「ケルトの神々による天地創造」がキリスト教のそれで上書きされた?ということを書きました。(確証はありません)

もしかしたら、その上書きされて消えた神話には、ダヌのことが詳しく載っていたのかもしれませんね。

ヌァザ

ダーナ神族を率いる戦いの神
ダーナ神族がアイルランドにやってきた時、ダーナ神族の王だったが、このヌァザです。
後に紹介をする、ダーナ神族の4秘宝のうち「剣」を持ち、戦いの神とされています。

ダーナ神族には、4つの秘宝があります。

  1. ヌァザの持つ 剣
    ひとたび振るわれれば誰も逃げられない、必中の剣
  2. ダグザの持つ 鍋(大釜)
    無尽蔵に食べ物を出す、主婦の味方
  3. ルーの持つ 槍
    勝利を約束する槍
  4. 叫び声をあげる 石
    正当な王が触れた時のみ、叫び声をあげる

統一感なさすぎw
ですが、ここに挙げた秘宝は他の神話にも類似するアイテムが結構存在します。

例えばルーの持つ槍は、北欧神話のオーディンが持つ槍を連想させたり、
石に関しても、ウェールズ地方に伝わる「アーサー王物語」では「正式な王と認められる人間のみが引き抜くことができる剣」として「エクスカリバー」が登場しますが、それの劣化版と思っていいのかな?笑

他の神話との関連を妄想するのも、楽しいです。

フィル・ヴォルグ族との戦い(マグ・トゥレドの戦い)では、ダーナ神族を率いて活躍をしますが、この戦いで片腕を失ってしまい、王の座を同族のブレスに譲ることになります。
※ケルトの文化圏において、五体満足であることが、王たる条件だった。

後に、医療の神ディアン・ケルトによって義手をつけられ、その息子ミァハにより切り取られた腕も元にもどり、再び王の座に返り咲きます。

戦いの神ですが、物語において最強というわけでもなく、どちらかというと強敵に負ける方が多い印象でして、第2次マグ・トゥレドの戦いでは、フォモール族の王バロールに敗れてしまいます。

ダグザ

ダーナ神族の族長
ダヌの子とも、親とも言われる。
万能の神で、浮気者。
ギリシア神話のゼウスに似ている?

ダーナ神族の4秘宝のうち無尽蔵に食べ物が出せる「大釜」を持っています。

この神様は戦闘においても絶大な力を持つんですが、敵側を偵察に行った時に、相手がミルク粥でもてなすと、そこで足止めくらっちゃう。
といったエピソードからもわかるように、大食漢で、愛嬌のある神様です。

ゴレンジャーなら間違いなく黄色ポジションだな。笑

ディアン・ケヒト

ちょっと闇がある医療の神
フィル・ヴォルグ族との戦いで、片腕を失ったヌァザの義手を作る、という優れた医者です。

しかし、後になって、息子のミァハの方が優れた能力を持っているとわかると、嫉妬から息子を殺害するという、闇を抱えた神でもあります。

後にダーナ神族の王となる、光の神ルーは彼の孫にあたります。

オグマ

イマイチ地味な戦いの神
オグマはヌァザと同じく戦いの神で、80頭の牛がやっと引ける巨大な岩も動かす力自慢の戦士です。

雄弁と言語の神という側面もあり、アイルランド語の表音文字、オガム文字の発明者とされています。

今回取り上げてませんが、彼の息子も物語を大きく動かすのに一役買います。

リル

家族に恵まれない不幸な海の神様
妻との間にできた、4人の子供を愛する良き父ですが、妻に先立たれます。

後妻としてイーファを迎えますが、彼女はリルの愛を受ける子供達に嫉妬して、呪いをかけて白鳥に変えてしまいます。
(その後、イーファはダーナ神族の王に罰として、悪魔に変えられてしまいます。)

呪われた子供達も最後は呪いが解けて、元の姿に戻りますが、その時に一気に歳をとって死んでしまう。
という救いのない悲劇を迎えます。
※シェイクスピアの「リア王」モデルになっています。

マナナン・マク・リール

後方支援的な動きをする海と異界の支配者
リルの息子。
とも言われるし、そうではないとも言われる。
ソースによって設定が違い、あまり統一性のない海と異界の支配者です。

魔法のアイテムを生み出したり、ルーの後見人になったり、直接的に物語には絡まないけど、魔力にも長けているようで、神秘的な力は凄く強そうなイメージです。

ルー

複雑な生い立ちをもつ光の神
光の神と言われるが、ダーナ神族のキアン(ディアン・ケヒトの息子)とフォモール族の王バロールの娘の間に生まれ、幼い頃はフィル・ヴォルグ族に育てられるという、少々複雑な生い立ちを持つ神様です。

万能の神として、フォモール族との戦い(第2次マグ・トゥレドの戦い)ではダーナ神族を勝利に導き、ヌァザの後継者として王とになります。

基本的には光の部分が目立つが、中には残虐さを見せるエピソードもあって、結構闇も見え隠れする神様です。
(書くと長くなるので、またの機会に書きたいと思います。このあたりは、祖父のディアン・ケヒトの性質を引き継いでいるのかな?)

ルーも4秘宝のうちの一つ、槍を持っていて、戦闘では絶大な強さを発揮し、祖父でもあるフォモール族の王バロールを倒します。

もう少し後のお話「アルスターサイクル」の主人公、クー・フーリンの父親でもあります。

最後に

今回はダーナ神族の、メインとして登場する神々をご紹介しました。
次回は敵対する勢力「フォモール族」と、どちらにも属しないんですが、物語に絡んでくる「戦いの女神達」について書きたいと思います。

では、最後までお読みいただきありがとうございました。