ケルト神話について-9 クー・フーリンの誕生~結婚まで。

今回からアルスターサイクルのあらすじをご紹介していこうと思います。



クー・フーリンの誕生

エヴァン・ヴァハのコノール王の妃に男の子が生まれました。
その子供は、王の妹のデヒテラが預かって育てるということになりましたが、間もなく病気にかかって死んでしまいました。

男の子を溺愛していたデヒテラは、はたの見る目にも気の毒なほどに嘆きました。

ある日、デヒテラの夢に立派な男の人がやってきました。
彼は自らを太陽神ルーと名乗り、

  • 死んだ男の子はルーの子供
  • デヒテラがルーの子を身ごもっていること
  • 子供にはセタンタと名付けるように

と告げました。
(ぱっと聞き、めっちゃ怖い話やなw)

やがて、デヒテラのお腹は本当に大きくなり、子供を生んだデヒテラはルーの言葉に従ってセタンタと名付けました。

ドルイド僧のモオランは、セタンタを見て、
「この子はその短い生涯のうちに、あらゆる悪と戦い、破壊を防ぎ、あらゆる争いを解決し、人々から賛美されるでしょう。」
と予言しました。

成長したセタンタは立派な戦士になるために訓練を受けていました。

ある日、コノール王は、クランという金持ちの鍛冶屋の館で開かれる宴会に招かれました。
王が館についてから、クランは自慢の猛犬を館の護衛のため放していました。

王は忘れていたのですが、セタンタがその館に遅れてやってくることになっていました。
※結構ひどいなw
遅れてやってきたセタンタはその猛犬に襲われますが、逆に素手でその猛犬を殺してしまいます。

自己防衛とは言え、忠実な犬を殺してしまったセタンタはクランに、

  • この犬と同じくらい勇ましい犬を国じゅうを探してつれてくること。
  • その時まで、セタンタが番犬となって、この館とクランを護衛すること。
  • を約束しました。

王はこのセタンタの勇気ある行動と力をほめたたえ、「クー・フーリン(フーリンの猛犬)」と名を与えました。
※猛犬はこの当時「美」や「勇気」の象徴だった。

こうして、英雄クー・フーリンは誕生しました。

クー・フーリンの修行&結婚

成長して、赤枝の戦士団の立派な戦士になったクー・フーリンは、エマーという女性に惹かれます。

求婚する、クー・フーリンですが、エマーは

  • 結婚するにはまだ早い
  • 修行して、もっと武芸を磨いてから来て欲しい
  • 結婚はそれから
  • と答えました。

これがきっかけでクー・フーリンは「影の国」のスカサハの元で修行をすることになります。

影の国に向かう道中には、難所もありましたが、父親ルーの手助けもあって無事にスカサハの弟子となることができました。
また、その道中で後に親友となる、フェル・ディアドとも出会いました。

スカサハの元での修行を終え、免許皆伝となったクー・フーリンは、スカサハから「ゲイ・ボルグの槍」を授かります。

修行を終えたクー・フーリンは約束どおりエマと結婚をして、二人は死ぬ日まで愛し合うこととなります。

クー・フーリンの不倫&息子殺し

前述で、「クー・フーリンは約束どおりエマと結婚をして、二人は死ぬ日まで愛し合うこととなります。」と書きました。

が、いきなりこれかよwww

クー・フーリンがスカサハの元で修行をしていた時に、スカサハはオイフェという女戦士と対立して、戦争になります。
この際にスカサハ側として参戦をした、クー・フーリンはすさまじい活躍をします。
そして、オイフェとクー・フーリンが一騎打ちすることになり、クー・フーリンが勝利します。

そしてクー・フーリンはオイフェの命を助ける代わりの条件として、

  • スカサハとの和睦
  • クー・フーリンと夜を共にすること
  • クー・フーリンの息子を産むこと
  • (※けっこうクズ男ですねw)
  • をつきつけます。

オイフェとの別れ際に、クー・フーリンは

  • 息子に「コンラ」と名付けること。
  • 大きくなったらこの指輪をしてアイルランドにやってくること。
  • を言い残しています。

やがて大きくなったコンラはアイルランドにやってくるのですが、叔父のコノール王は預言者でもあり、
「彼はアイルランドに災いをもたらす」と予言をして、引き返すように伝令を出します。

しかし、コンラはそれを無視します。
父であるクー・フーリンに、

  • 人に名を聞かれても答えない
  • 誰からどう命令されても進む方向を変えない
  • 戦いを挑まれたら断らない

という禁忌(ゲッシュ)を課せられていたからです。

こうして、王の伝令を無視してやってくるコンラに、王は国の戦士を向かわせますが、そこはクー・フーリンの息子コンラ。
やってくる戦士を次々に倒して、どんどんアイルランドに向かってきます。

ついに王はクー・フーリンに、コンラと戦うように命じます。
向かってくる相手が息子であるとは思わずに、クー・フーリンはコンラと戦うことになりました。

戦いは熾烈を極めましたが、最後にはクー・フーリンがゲイ・ボルグの槍でコンラを倒します。

倒した若者の指に、指輪があることに気付いたクー・フーリンは、それが自分の息子であったことに気づき、それから3日間人前に姿を見せることはありませんでした。

最後に

長くなったきたので、今回はここで一旦記事を終わろうと思います。
が、オイフェとコンラのエピソードを必要だった?クー・フーリンがタダのクズ男じゃんw と思ってしまったのは、私だけでしょうか?

この後、物語は「クーリーの牛争い」という、アルスターサイクルの見せ場に突入していきます。
個人的に「クーリーの牛争い」は「神話サイクル」の「マグ・トゥレドの戦い」、「第二次マグ・トゥレドの戦い」と同じくらい好きなエピソードです。

では、最後までお読みいただきありがとうございました。