ベルギー奇想の系譜展に行ってきました。(兵庫県)


先月「ベルギー奇想の系譜展」に行ってきました。

会場はかなりの人で賑わっていて、特に家族連れが多かったです。

130点以上の展示品があって、回るのに2時間以上かかった。
過去の芸術家の作品も好きなんですが、現代アートの作品も面白かったです。




7月に「バベルの塔」展ってのがあります。
仕事の関係で行くのは来月になるかと思うんですが、その頃にこの記事を見て思い出せたらなんて思ったので、気になった作品をメインに書いてみたいと思います。

15~17世紀の芸術家達の作品

ベルギーはケルト人のベルガエと呼ばれる人達がルーツとなってまして、ローマ帝国出現後はカエサル率いるローマ軍に制圧され、キリスト教が普及します。
(そのあたりは、このブログでよく書いている「ケルト神話について」を見ていただければと思います。(笑)

「ケルト神話」の記事 リンク(別タブ)

ということで、キリスト教に関連する逸話がモチーフになった作品が多かったです。

七つの大罪がモチーフになった「トゥヌクダルスの幻視」

「七つの大罪」はキリスト教(主にカトリック協会)の用語で「七つの死に至る罪」を意味します。

「高慢」「貪欲」「嫉妬」「憤怒」「色欲」「貪食」「怠惰」

これを見て漫画「七つの大罪」や「鋼の錬金術師」を思い出す人も多いと思いますが、「鋼の錬金術師」の敵役ホムンクルス達の名前は、七つの大罪を英語にしたものです。

今回の展示では、この七つの大罪をモチーフにしたものが一番多かったように思います。

この写真の作品「トゥヌクダルスの幻視」もこれらの罪が表現されてます。

左下の方にいるのが、アイルランドの騎士トゥヌクダルスです。

後ろにいるのは案内役の天使かな?

中央の下では「強欲」の罪人がシバかれてます。

右上では「怠惰」の罪人が悪魔(?)達に囲まれています。

こんなカンジで他の罪も表現されていて、ちょっとウォーリー的楽しみがあります。

「トゥヌクダルスの幻視」について

12世紀の書物。
アイルランドの騎士トゥヌクダルスの不思議体験を、修道士マルクスがラテン語に翻訳・執筆した物語。
トゥヌクダルスが発作で倒れる → 天使に導かれて、死後の世界を体験 → 天使によって地上へと返される。

ってことでダンテの「神曲」みたいやな!と思ったんですが、どうやらこちらの内容が神曲に影響を与えたようです。
(神曲は13~14世紀で作られた。)

七つの美徳がモチーフになった「剛毅」

あんまり聞いたことがないんですが、七つの大罪があれば、七つの美徳ってのもあるようです。

元々は七つの大罪の対になるものではありませんが、七つの美徳が七つの大罪を倒す物語もあるみたいです。
由来によって七つの内容が違うものが幾つかあるようです。

「節制」「信仰」「愛徳」「希望」「正義」「賢明」「剛毅」

こちらはピーテル・ブリューゲルの「剛毅」です。

赤丸は「剛毅」を表す像です。
七つの大罪には対応する悪魔と動物がありまして、美徳を守る人々によって対応する動物(罪)が倒されているそうです。

高慢
ルシファー
ライオン

貪欲
マンモン
狐・針鼠

嫉妬
リヴァイアサン
犬・蛇

憤怒
サタン

色欲
アスモデウス
山羊・サソリ

貪食
ベルゼブブ
豚・蝿

怠惰
ベルフェゴール
ロバ・くま

聖クリストフォロス

クリストフォロスは、3世紀のローマ帝国時代に殉教したキリスト教の伝説的な聖人です。
はじめ彼はレプロブスという名前でした。

レプロブスは人々に奉仕するため、無償で流れの急な川を渡る人を助ける。ということをしていました。

ある日、小さな男の子が川を渡りたいということで、男の子を背負って川を渡るうちに何故か異様な重さになり、男の子がただものでないことに気づきます。

名前をたずねると、男の子は自らがイエス・キリストであると明かします。
※イエスは全世界の人々の罪を背負っているため重いということらしい。

川を渡りきったところでイエスは祝福し、今後は「キリストを背負ったもの」という意味の「クリストフォロス」と名付けてくれました。

なんだかキリストが「子泣き爺」みたいですなw

聖アントニウスの誘惑

聖アントニウスは、キリスト教の聖人で、修道士生活の創始者と言われています。

いろんな誘惑を象徴する悪魔に囲まれて苦悩するアントニウスを描いた作品が多かったです。

ここまでが1つの「章」として構成されている美術展だったのですが、この時点で1時間以上経ってしまい、正直僕の集中力は切れていましたね。笑

19世紀から20世紀初頭の象徴派・表現主義

フェリシアン・ロップス「娼婦政治家」


腐敗した政治家=豚っていうことなのかな?
そういう汚らわしいとされている存在が天使像の上を歩いているってことで、風刺めいたものを感じます。

ロップスは政治風刺の活動もしていました。

ジェームス・アンソール「ゴルゴダの丘」


ジェームス・アンソールは「異端」とされていて、仲間や批評家から酷評され孤立していたそうです。
磔にされているキリストのところに「ENSORE」(アンソール)と書かれてまして、自分の境遇とキリストを重ねて表現しています。

20世紀のシュルレアリスムから現代まで

マルセル・ブロータース「猫へのインタビュー」

これは絵とか彫像の類ではなくて、作者が猫にインタビューをした音声のみの作品となっています。

はじめのうちはまともなインタビューをするのですが、猫が「にゃー」としか泣かないので、後半は
「これはパイプですか?」
「ニャー」
「これはパイプではない?」
「にゃー・・・」
「これはパイプだ!」
「ニャー!」
「これはパイプではない!!」
「・・・」

みたいな内容だったかな。

トマス・ルルイ 生き残るには脳が足らない」


これはブロンズ像が展示されていたんですが、思っていたよりもデカくて迫力がありました!
現代人への風刺だと思うんですが、人間が自ら望んで知識をどんどん付けていった結果、頭が大きくなりすぎて首がグニャリ・・・と曲がっています。

とまぁ、全部で134点展示されていたのですが、うち一部だけを紹介しました。

感想

この美術展は~2017/07/09までやっていて、ちょうど終わったばかりなのですが、とても面白い美術展でした!

正直絵とか作品がどうのこうのというよりは、モチーフになった神話の方に興味が行ってましたが。笑

不満点としては、何周もグルグル回れるスタイルじゃなかったのが惜しかったですね。
1回で見てやろうと思うと、前半で疲れてしまい、後半に行けば行くほど流すカンジになっちゃいました。

展示数が多いなら、流すカンジで見る → 興味のある作品をもう一度じっくり見る。
ってことをしたかったんですが、再入場はできないのと、人が多くて戻ることができない雰囲気だったので・・・。

でも、逆に行ける時間があったらもう1回行きたい!って思える内容でした。
今回は中盤かなり流してしまったので、もしも、もう1回行けるのなら、次は中盤からじっくり見たかったですね。

あと、今回はかなり混み合っていたので、人にぶつかったりするのが怖くて音声ガイドを申し込まなかったんですが、こういう逸話に基づいた作品なんかは、話の内容がわかった方が見ていて面白いと思うので、行く人は是非音声ガイドを借りることをオススメします!

ということで、僕にはド・ストライクな美術展でした!

今回はかなり長くなってしまいました。




最後までお読みいただきありがとうございました。