ケルト神話について-3 神話サイクル



はじめに

前回は

  1. ノアの一族
  2. パルホーロン族
  3. ネヴェズ族
  4. フィル・ヴォルグ族

という4つの種族が入れ替わり立ち代り、アイルランドにやってきた流れでした。

今回はそんなアイルランドに、「トゥアハ・デ・ダナーン族」(ダーナ神族)がやってきて、アイルランドの新たな支配者として君臨するまでの大筋をご紹介します。

今回登場する主な部族は、ダーナ神族フォモール族という部族なのですが、沢山の神や魔神が登場します。
登場人物(?)の紹介は、一旦あらすじを紹介した後の記事で書いていこうと思います。

フィル・ヴォルグ族 と ダーナ神族 の戦い(マグ・トゥレドの戦い)

フィル・ヴォルグ族はアイルランドの土地を5つに分けて支配していました。

  1. 北部 アルスター
  2. 東部 レンスター
  3. 南部 マンスター
  4. 西部 コノート
  5. 中央 ミース

そこにフィル・ヴォルグ族と同じく、ネヴェズ族から派生した種族、「トゥアハ・デ・ダナーン族」(ダーナ神族)が上陸してきます。

はじめ、フィル・ヴォルグ族は平和的な解決を期待して、使者を送りました。
そこで、両種族の使者がお互いの武器を見比べると、ダーナ神族の武器の方が数段優れていました。

ダーナ神族の優れた技術を認めたフィル・ヴォルグ族は、アイルランドを2つにわけて住むことを認めました。
しかし、やがて両種族間で戦争がおこります。

この戦争を「マグ・トゥレドの戦い」といいます。
このマグ・トゥレドの戦いの際に、ダーナ神族はフォモール族と同盟を組んでいます。

フォモール族とは
ここまでアイルランドに様々な種族が、入れ替わり、立ち替わりやってきたことを書いてきましたが、彼らはそれ以前の太古からアイルランドに住む巨人族です。

醜悪で邪悪な怪物のイメージで描かれることが多く、ギリシア神話のティタン族や、ゲルマン神話の巨人族と類似して、神々と敵対する勢力として描かれます。

戦争の結果、フィル・ヴォルグ族は負けて、コノート地方に住むこととなり、アイルランドの支配権を失います。

こうしてアイルランドの支配権は、フィル・ヴォルグ族からダーナ神族に移ります。

ダーナ神族 と フォモール族 の戦い その1

前述の「マグ・トゥレドの戦い」の際に、ダーナ神族を率いていたのはヌァザでした。
流れで行くと、ヌァザが王となるのですが、ヌァザは「マグ・トゥレドの戦い」で片腕を失ってしまいます。

ケルトの文化圏では、王の条件として「五体満足」でないといけないと言われていました。
王が身体的障害を持つと、国は荒廃し死の世界となると考えられていたのです。

このため、ヌァザは王でいることができなくなりました。
そこでダーナ神族は次の王として、ダーナ神族とフォモール族の間に生まれたブレスを選びます。

ブレスはとても美しい王でしたが、王の資質がなく暴君となり、国は荒廃し、ダーナ神族には過剰な税と労働が強いられました。

しかし、医療の神であるディアン・ケヒトと、その息子であるミァハによってヌァザは失った腕を取り戻し、ブレスから王位を取り戻すことに成功します。

そのことに不満をもったブレスは、フォモール族の強力な長「魔眼のバロール」インデッハの後ろ盾を得て、ダーナ神族に戦いを挑みます。

ダーナ神族は武器を手にとって戦いましたが、狂暴なフォモール族の力を押し返すことができず、敗れてしまいフォモール族に支配されることになってしまいます。

ダーナ神族 と フォモール族 の戦い その2(第2次 マグ・トゥレドの戦い)

フォモール族に支配された、ダーナ神族達は再び苛烈な税や強制労働に苦しむことになりました。

そこに、ダーナ神族とフォモール族の間に生まれた、光の神ルーがダーナ神族のもとにやってきます。

光の神ルー
先住民族フィル・ヴォルグとの戦争(「マグ・トゥレドの戦い」)の際、ダーナ神族はフォモール族と同盟を結んだと書きました。
その際両族は、同盟のしるしとしてダーナ神族の医療の神ディアン・ケヒトの息子キアンと、フォモール族の王バロールの娘とを結婚させます。
その夫婦の間にできたのが、光の神ルーです。

このルーは2種族間の間に生まれ、幼少はフィル・ヴォルグ族のもとで育つという、少々複雑な生い立ちを持っています。

ルーはヌァザの前でその優れた能力を見せると、ヌァザはその力を認め、フォモール族を倒すのに力を貸して欲しいとたのみます。
その万能のルーの力に惚れ込んだヌァザは、ダーナ神族の王位をルーに譲り、ルー率いるダーナ神族はフォモール族に戦いを挑みます。
この戦いは、「第2次 マグ・トゥレドの戦い」と呼ばれています。

結果、両軍に被害が出ますが、ルーは魔王バロールを倒し、戦争はダーナ神族の勝利に終わります。
こうして、闇の力をもつフォモール族は海の彼方へと去り、ダーナ神族たちは光と文明の世界を確立することになります。

最後に

以上で、アイルランドの支配権が、フィル・ヴォルグ族からダーナ神族にうつるあらすじをご紹介しました。
その後の流れは、更に別の種族が登場することになりますが、次回は「はじめに」にも書いたとおり「ダーナ神族の神々や、フォモール族の魔神たち」を紹介したいと思います。

では、最後までお読みいただきありがとうございました。