今までこの「ケルト神話について」って記事ではケルト神話の神話サイクル、アルスターサイクル、フェニアンサイクルを紹介してきましたが、時系列にあわなくてもれたエピソードが結構あります。
今日はそんなエピソードの一つ「常若の国に行ったオシーン」という話を紹介したいと思います。
オシーンについて
オシーンはケルト神話の「フェニアンサイクル」に登場する人物です。
このフェニアンサイクルの主役とも言える人物はフィアナ騎士団の団長であるフィン・マックールという人でして、そのフィンの息子がこのオシーンです。
母親は妖精のサヴァという人(?)で、元々はとある妖精の求婚を拒んだが為に鹿にされていました。
その魔法をフィンが解いて、二人は結ばれたのですが、フィンが争いで留守にしている間に姿を消してしまいました。
その後、森で発見されたのがオシーンで、オシーンという名前は子鹿という意味です。
↓関連する記事です。
ケルト神話について-13 フィン・マックールと妖精サヴァ
常若の国に行ったオシーン
ある日、フィアナ騎士団の面々はレイン湖付近の林で狩をしていました。
すると西の方から馬に乗った、それはそれは美しい女が現れました。
フィンがその女性に近、丁寧に名前と用を訪ねました。
私は海の彼方にあるチル・ナ・ノグ(常若の国)からやってきた王女ニァヴといいます。
貴方の息子、オシーンに愛を捧げようと旅をして迎えにきたのです」
これを聞いたオシーンは、彼女の美しさに心を奪われてしまいました。
あなたと結婚して、常若の国に行きます!
貴女の他に私の妻になる人はこの世にいない!
実はオシーンにはオスカーという息子がいます。
これからすると、彼には妻がいる・・・もしくはいたのだと思いますが、離婚とか死別してるのかな?
しかし、初見で結婚と別の国に行くことを決めるって、なんてゆーかスゴイですね、よっぽど美しかったんでしょうか。
そしてニァヴはチル・ナ・ノグ(常若の国)がいかに素晴らしいか歌うように語りました
太陽のひかり輝く喜びと楽しさの国〜♪
蜂蜜と酒が絶えることなく、木には果実が実り、花々が咲き乱れる国〜♪
国の人々は病気、老い、死など苦しみとは無縁で、楽しい宴が続く国〜♪
さぁ私とともに行き、私の夫となり、そしてチル・ナ・ノグ(常若の国)の王となるのです〜♪
こう書くと歌は超絶下手なように思えますが(笑)
これを聞いたオシーンは、チル・ナ・ノグ(常若の国)に行くことを決心しました。
フィンや騎士団の仲間達は嘆き、悲しみますが、オシーンは
「すぐまた帰ってくるから」と約束をしてニァヴと旅立ちました。
道中、フォモール族の王宮に立ち寄り、巨人と戦うなど冒険もありましたが、オシーンとニァヴは無事にチル・ナ・ノグ(常若の国)に到着しました。
ニァヴの両親はオシーンを歓迎して祝宴の日々が続きました。
こうしてあっという間に3年の月日が流れました。
「すぐまた帰ってくるから」ってゆーてたのにって結構な月日経ってるなw
オシーンはそろそろ父や友人達に会いたいと思って、ニァヴにそのことを告げます。
ニァヴは悲しみの表情を浮かべ、しかしオシーンの思いを拒否することもしませんでした。
そして、彼女はこう言いました。
この白馬が道をよく知ってます。
これに乗って行きなさい。
ですが、決してこの馬から降りてはいけませんよ!
絶対にですよ!
ネバエバですよ!
本当に絶対の絶対ですよ!
(しつこい)
これを聞いて、オシーンは心の奥でこう思いました。
わかった!
(これはフリということが(違))
こうして、決して白馬から降りないことを約束した、オシーンは故郷のエリンに向かいました。
白馬はあっという間にオシーンをエリンの地に運びました。
しかし、そこはオシーンの知っている風景ではなかったのです。
こ、これわ!?
そうですね、やりすぎましたw
実際はこんなもんなのかな?
なーんだ。
でも僕の知っている風景とは違うなぁ。
丘や湖は小さく縮んでいました。
フィアナの人影も、仲間達の家も見当たりません。
そこに通りすがりの人々がやってきました。
彼らは小さくまるで小人です、彼らもオシーンを見て驚いていましたが、オシーンはフィアナ騎士団のことを聞いてみました。
すると、彼らの返事はオシーンが期待したものとはかけ離れていました。
- フィアナ騎士団は今はなくて、かなり昔のものとなっている
(小人たちが昔話として、親や先祖から聞いている) - その昔話によると、団長フィンの息子は常若の国に行ったっきり帰ってこなかった
これを聞いたオシーンは、驚いて父の館があったアレンの館を目指し走りました。
しかし、そこにはあるはずの館はありませんでした。
オシーンは悲しみのどん底にうちひしがれながら、夢中に知人を求めて馬を走らせましたが、出会うのはオシーンを見て驚く小人たちだけでした。
更なる悲劇
途方に暮れているオシーンでしたが、谷で大勢の小人たちが石を動かそうと必死になっているのを見かけました。
小人の何人かが、その石の下敷きになっているのです。
オシーンは馬の上から身をかがめて、その石をどかせてやりました。
そのはずみで、アブミ(馬具の足をかける部分)が切れて、オシーンは馬から落ちてしまいました。
すると乗ってきた白馬は風よりも早く去ってしまい、オシーンは一人残されてしまいました。
そして次の瞬間、オシーンの体に変化が起こりました!
目は霞んで見えなくなり、若さが去っていき、全身の力が抜けていき、地面に倒れてしまいました。
白馬は二度と現れず、失った若さも力も戻りません。
このような有様で、彼はずっとニァヴのことや父や仲間のことを偲んで過ごしましたとさ。
バッドエンドやなーw
しかし、この話には、
- 老人に変わってしまったオシーンは、その場で灰になって崩れ去ってしまった。
- 後にもう一度常若の国に戻って、ニァヴと再会し、いつまでも楽しく暮らした
など別の終わり方する説もあって、様々なバリエーションがあります。
ってゆーか灰になって崩れるのとか、マジで救いが無さすぎる笑
何が時系列に合わなかったか
フィアナ騎士団の話は以前の「ケルト神話」の記事で書いています。
このフィアナ騎士団の最後になる戦いでは、
- オスカー死亡
- フィン死亡
- オシーンは生き延びた
- フィアナ騎士団は壊滅
と、書きました。
↓詳しくはこの記事をご覧下さい。
ケルト神話について-16 フィアナ騎士団の悲劇
なので、この出来事は最後の戦いの前?とか思ったんですが、それならオスカーは参戦できなかったハズです。
最後の戦いの後ならフィンはもちろん、騎士団自体が無くなってますし。
ってことで、これはパラレルワールド的なストーリーなのかな。とか勝手に考えてます。
最後に
この話読んでて「浦島太郎に似てるなー」って思った方は多いと思います。
実際僕もそう思いましたし、「浦島太郎」「ケルト神話」で検索してもらうと、そういった記事がたくさん出てきます。
ケルトと日本って距離的にすごく離れているけど、当時は時間の流れが今よりはかなりゆっくりしていて、同じような話が西から東に形を変えながら伝播していったのかなー。とか思います。
日本神話としては古事記とか日本書紀が挙げられますが、成立が奈良時代ということで、神話としては成立時期が比較的新しいものとなります。
いろんな国の神話の影響を受けたんだろうな。
って部分が多くて、そのあたりを意識しながら他の国の神話を読むとまた違った楽しみがありますね!
では、最後までお読みいただきありがとうございました。