エジプト神話について-3理想の王オシリスとセトの計略

エジプト神話の続きについて書きます。
今までは太陽が生まれた~とか、天と大地はこうやって分かれたとか。
結構壮大なスケールの話でした。(ヘリオポリスに伝わる創世神話)

で、今回からは、そのヘリオポリス神話に続く位置づけとして扱われることが多い、オシリスとその兄弟たちの神話「オシリス神話」について書こうと思います。
おそらくは日本に伝わっているエジプト神話の中では一番メジャーな内容だと思います。
僕も昔本で読んだ記憶があるんで、この先の展開も薄っすらと覚えているんですが、今までの話しから一気にスケールが小さい話になっているカンジがします。(笑)



4兄弟の神

大地の神ゲブと天空の神ヌトの間には4兄弟の神がいました。

  1. オシリス
  2. イシス
  3. セト
  4. ネフティス

一応この順番は生まれた順なんですけど、この生まれた順も諸説あります。
だいたいオシリスが長兄というのは定説みたいなんですが、セトは2番に生まれた説、3番目説、末っ子説があるようです。
とりあえずこの記事では3番目説でいきたいと思います。

シューとテフヌトが兄弟で夫婦となり、ゲブとヌトの兄弟が夫婦となった様に、この4兄弟も2男神、2女神という組み合わせだったので、兄弟同士で夫婦となっていきます。
長男のオシリスと長女のイシス、そして3男のセトと末っ子のネフティスの組み合わせです。

理想の王オシリス

オシリスは知性が高く、温厚な性格で、美しい容姿を持ち、とても魅力的な神でした。
これまではアトゥム(ラー)が主神として君臨していましたが、後継者として君臨しており、農業を広めたり、法律を作ったりして、人々から絶大な人気がありました。

個人的にイメージとしては冥界の王。ってカンジなのですが、一方で豊穣を司る穀物の神で、温厚な性格を持つ理想的な王として民衆だけでなく王族にも信仰された、まさに万人受けの神なのです。

手元の本に食人を禁止にし、エジプトに平和と文化的な生活をもたらした。といった旨のことが書いています。
それまでは狩が中心で、時には人が人を食べるなんてことが起こり得るほどの食糧難だったけど、オシリスが農業を広め食糧難を解決して、食人を禁止にしたという流れなのかな?

ちなみに、農業を広めるのには知恵の神トトの力を借りたようです。
トトは前回も登場しましたが、オシリスの母ヌトを助けるだけでなく、その子達にも尽力する本当にいい人(神)ってカンジですね。

セトの計略

一方セトはオシリスとは性格は正反対でとても荒々しく暴力や争いを好む神でした。
農耕神として人々に恵みをもたらすオシリスに対して、セトは戦争の神、嵐の神として砂漠の脅威を体現した神で、性質もオシリスとは対極を成す存在です。
一部のエピソードでは英雄視されているようなものも見られるのですが、基本的には悪役として登場することが多い神ですね。

セトは、オシリスは温厚で争いを起こすような王ではなかったので、自分が好きな争いが起きないのが面白くありませんでした。

さらにセトは、「我こそが王!」と思っている俺様キャラでした。
皆がオシリスを王として敬愛しているのが妬ましくてたまりません。
能力ではなくて自分が弟だから、王になれなかった、と思っていたのでしょう。

「だったら、兄がいなくなればいい!」

セトはオシリスを憎むあまり殺害しようと試みます。

考えも短絡的なところがあります。

セトが考えた作戦はこうです、
(1)オシリスとイシス夫婦を自宅の宴会に招きます。
(2)オシリスを酔わせて、酔ったところをブスリ!
攻撃!!粉砕!玉砕!大喝采ー!
・・・こんなんすぐに犯人とバレて、裁かれてしまいそうだけど。(笑)

ネフティスの不義

セトは計画どおり、自宅の宴会に兄夫婦を招きました。

そして、じゃんじゃんお酒を振舞いまして、オシリスは、酔いがまわりました。
ここまでは作戦どおり。( ̄ー ̄)ニヤリ

しかし、ここでセトの思惑とは外れた展開となります。

しかし、実はネフティスも兄オシリスに思いを寄せていました。
イシスとネフティスはとても似た兄弟で、2人ともオシリスに惹かれていました。

しかしネフティスは妹ということで、姉のイシスがオシリスと夫婦となり、ネフティスはセトと夫婦となることになったのです。
他に同世代の男神がないという理由で夫婦となったので、ネフティスはオシリスへの想いを忘れることができませんでした。

そして、今恋焦がれた人が、酔って我が家にいる。
・・・先程も書きましたが、ネフティスは姉イシスととても似た容姿でしたので、自身をイシスと偽って、オシリスと肉体関係を持ってしまいました。

自身の夫、そして姉(相手の妻)が自宅にいる状態でよくそんなことができたもんです。
しかも、その現場をセトに目撃されてしまいました。

しかし、これで現場に乗り込んでオシリスをブスリやっちゃっても、妻を寝取られたということで大義名分があるように思います・・・が、セトはその場ではそうしませんでした。
そして、次回さらにぶっ飛んだ作戦を実行するのでした。

つづく(笑)

話は少しそれますが、セトは子を望むネフティスを拒んだ。セトは生殖能力が無かった。とかいった記述がありました。
そして、今回オシリスとネフティスは肉体関係を持ったわけですが、たった一度のその過ちでネフティスは子を身ごもりました。
その子はとても有名な神、アヌビスです。
(ネフティスはセトの怒りを恐れて、アヌビスを捨てるが、イシスが養子として引き取る。)
アヌビスはもう少し後の方でまた登場する予定です。

次回はセトのオシリス抹殺計画その2となります。(笑)

では、最後までお読みいただきありがとうございました。