ギリシア神話-57 トロイア戦争(6)

どうも、元山狐です。

トロイア戦争も激しさを増して、両陣営ともにかなり戦力を失い、消耗戦となってきました。

今回は戦争を起こすきっかけとなった王子パリスの最期、戦争を終結させた英雄オデュッセウスの「トロイの木馬」作戦や、戦争には直接参加していないんですが、予言の能力を持ったカッサンドラという、不幸な王女の話なんかを書いてみたいと思います。




王子パリスの最期

前回アキレウスがパリスの弓にやられてしまいましたが、パリスもこの時の戦闘で命を無くしています。

トロイア戦争の3回目の記事で登場する人物や両国に加担する神々を紹介しましたが、その中にピロクテテスという弓の名手がいました。

ギリシア神話-54 トロイア戦争(3)

彼はイアソンのアルゴナウタイにも参加をしていた英雄でして、父ポイアスがヘラクレスから譲り受けたヘラクレスの弓を持っていました。

ヘラクレスの弓矢ってことは、ヒュドラの毒が塗られていたんでしょうね。

パリスはピロクテテスに対し、弓で応戦しましたが、ピロクテテスの矢の傷で瀕死の重傷を負い、そのまま死んでしまいました。

ギリシア神話-41 英雄イアソンの旅立ち

なんだかよくわからない状況に

ヘレネを奪ったパリスが死んだんだから、トロイア的にはヘレネをトロイアに置いておく意味はないし、スパルタにヘレネを返して戦争も終わり!

・・・というわけにもいきませんでした。

パリスの弟ヘレノスとデイポボスがヘレネを巡って争い、ヘレネはデイポボスの妻になることになったのです。

しかも、ヘレノスはこれに不満を持ってギリシア側に寝返ってしまいます。

最も頼りにしていたヘクトルを失い、パリスをも失った上に、残った息子たちは仲違いして、挙句1人は敵国に・・・。

トロイア王プリアモスからしたらヘレネは疫病神に見えたんじゃないでしょうか。

しかし、個人的にはいかにヘレネが美しいとは言え、死んだ兄の元妻を兄弟で争う。ってなかなかないんじゃない?と思ってます。

今回の戦争はゼウスが「増えすぎた人間を減らすため」の戦争です。
ここで戦争が終決してしまうと、予定の数に達しないということもあるかも知れません。
なんとなく、神の力みたいなものが働いてこの兄弟を争わせた?とか勝手に思っています。

いずれにしても、なんかもう無茶苦茶な状況ですし、両陣営ともに主だった戦力は失い、士気も下がって互いに決定力に欠ける状況になってしまいました。

トロイの木馬

そんな状況の中、またまたギリシア軍の一休さんオデュッセウスのトンチ炸裂です。

「トロイの木馬」って聞いたことがあると思うんですが、コンピューターウイルスとしての方が有名だと思います。

ではここで、トロイの木馬作戦について簡単に説明しておきます。

  1. 巨大な木製の馬を作ります。
    この木馬はエペイオスという拳闘家且つ、工匠が作りました。胴体は空洞になっていて、人が入れるようになっています。
  2. 木馬の中にギリシア軍の精鋭が入ります。
    副将メネラオス、オデュッセウス、パリスを倒したピロクテテスらが入り、最後に木馬を作ったエペイオスが入って木馬を閉じました。
  3. ギリシア軍らは拠点としていた陣営を焼き払い、撤退したかのように見せかけます。
    (船で近くの島に移動し待機しています。)
  4. ギリシア軍が撤退したと思い込んだトロイア軍は、木馬を戦利品としてトロイアの城内に持ち込みます。
    その際にトロイアの鉄壁を誇りギリシア軍を悩ませた門を、巨大な木馬を通す為に壊しています。
  5. トロイアの王らは勝利の宴を開催してみんなどんちゃん騒ぎします。
  6. トロイア軍らが酔って寝静まったら作戦開始です。
    中から、ギリシア軍の精鋭らが飛び出し、待機していたギリシア軍を招き入れ一気に攻め入ります。
  7. こうしてトロイアは一晩にして壊滅します、チャンチャン♩

この作戦で王のプリアモスを始め、殆どの主要人物は殺されてしまい、トロイアは滅びました。

こうして戦争は終わった

実は王女のカッサンドラはアポロンから予言能力を授かっていて、随分前からこの結末がわかっていました。

しかし、アポロンから能力を授かった理由はアポロンがカッサンドラに恋をしたからで、下心(カッサンドラを抱きたい)から能力を授けました。

能力を貰ったカッサンドラは、自分がアポロンに抱かれた後、アポロンの恋が冷めて捨てられるという予知をして、アポロンのもとから逃げました。

怒ったアポロンは、
「カッサンドラの予言を誰も信じないようにしてやろう!」
と呪いをかけました。

なので、ヘレネをトロイアに迎え入れる時、木馬を城内に入れる時、カッサンドラは猛反対したのですが、誰もそれを信じなかったのです。

滅亡へのシナリオがわかっていて、トロイアに残っていた彼女はかなり恐怖に怯える毎日を送っていたんじゃないでしょうか。

カッサンドラやヘクトルの妻アンドロマケをはじめとした、トロイアの女性達は戦利品として、ギリシア軍の将軍達に分け与えられました。

この逸話にちなんで、イタリア語で「カッサンドラ」とは「不吉」や「破滅」といった意味らしいです。
※彼女は何も悪いことしてないんだけどね・・・。

こうして多くの英雄らが命を落としたトロイアは終結しました。

次回は、戦争の後日譚、生き残った将軍らをはじめとした人物がその後どうなったかを書いてみたいと思います。

では、最後までお読みいただきありがとうございました。