どうも、元山狐(もとやまきつね)です。
今回も前回に続いてトールのウートガルズでの冒険について書きたいと思います。
初回で新たな仲間(従者)を得て、2回目でウートガルズの王のところまで辿り着きました。
今回は対決パートとなるのですが、北欧神話には珍しく、あまり血生臭い表現はなく、敵方のウートガルザ・ロキの大物感がなんだか格好良く思えてしまう内容になってます。
ロキとシャールヴィの戦い
前回ウートガルザ・ロキは
「この館に入るには何か人より優れた特技・能力を持った者でないと入れない。」
と言いました。
これに対してロキは
「俺は大食い、早食いが得意だ!」
と、言いました。
そこで、ウートガルザ・ロキは、ウートガルズのロギという者とロキの大食い対決を実施させました。
肉の大食いということで、大きな桶に肉が山盛りにされて運ばれてきました。
同時に食べ始めた2人。
一見勝負は互角に見えたのですが、ロキが肉だけ食べているのに対し、ロギは肉だけでなく、骨、更に桶まで食べてしまい、こうなってはロギの勝ちを認めざるを得ません。
続いてウートガルザ・ロキは従者のシャールヴィを指名しました。
前回書きましたが、シャールヴィ俊足の持ち主です。
そこで、彼は競争で戦うことにしました。
ウートガルザ・ロキ側からはフギという少年が出場しました。
自信満々のシャールヴィでしたが、結果シャールヴィは惨敗してしまいます。
3回勝負だったのですが、3回目に至ってはシャールヴィがコースの半分もいかない間にフギはゴールを決めていたのです。
本来ならここでレクスヴァも指名されそうですが、ここでは完全に空気扱いされてまして(笑)、いよいよトールが指名されました。
トールの奮闘
まずトールは
「ワシは大酒飲みだ!」
と言いました。
ロキと被ってるような・・・(笑)
でもウートガルザ・ロキはそれを受け付けて、一つの角杯を持って来させました。
そして、
「一口で飲み干せば見事な飲み手」
「ウートガルザ・ロキの家来にも二口で吞み干す者がちょくちょくいる。」
「三口で飲めない者は(ウートガルザ・ロキの家来には)いない。」
とトールを挑発。
トールは角杯を見て、
「少し長いが、いけんことはない」
と思い、更に彼は喉が渇いていたので杯に口をつけて一気に飲み干そうとしました。
そして息が続けなくなって、口を杯から離すと!
なんと酒は全く減った様子がありません。
ウートガルザ・ロキは
「なんか思ってた程じゃないね。二口目で全部いけるんだろうね?」
と煽ります。
トール
「ムムム・・・」
トールは無言で杯に口をつけて、先程より勢いをつけて、思い切りいき勢いをつけて飲みました。
が、それでもお酒は殆ど減ってません。
ウートガルザ・ロキ
「ヘッボ w w wなんか全然ダメですね。(笑)そんなんじゃここで大きな顔できないよ? w w w」
それを聞いたトールは
「ムキー!」
となり、先程よりも更に勢いをつけて、飲みに飲み、もうこれ以上は飲めない!というところまで飲んで杯から口を離しました。
今度はお酒はかなり減りましたが、それでもやはり残っています。
ウートガルザ・ロキ
「OK!OK!(笑)
どうやら、アースガルズのトールも思っていた程ではないみたいですな。
酒の飲みっぷりは大してことなかったし、別の特技はない?」
次の競技はウートガルザ・ロキから提案がありました。
彼の飼っているネコを床から持ち上げるという、かなり人を馬鹿にしたものでした。
灰色をしたかなり大きなネコでした。
トールは近づいて、必死にネコを持ち上げようとしますが、ネコの片足が僅かに浮くだけで、それ以上はどうにもなりませんでした・・・。
ウートガルザ・ロキ
「うーん、これもダメみたいだね?なにしろこのチミは、このウートガルズの男達に比べたら、随分とちっさいからなぁー。(笑)」
トールはこれに怒り、
「それなら、誰かと俺を戦わせろ!」
といいました。
ウートガルザ・ロキは
「うちの男達は、今のチミと戦うのを名誉と思わないよー。・・・なら、うちの乳母のエリバアさんと相撲してみる?」
トール
「バ、ババァだと!?クッソー馬鹿にしやがって!見てろ!」
ということで、トールは手加減をするつもりはなく、全力で老婆を取っ組み合いました。
・・・が、老婆はビクとも動きません、そのうち老婆が力を入れてグイと押し付けてくると、トールは片ひざをついてしまいました。
結果トールの惨敗!だが・・・
相撲の後、ウートガルザ・ロキは酒盛りをしてトール達をもてなしました。
そして、朝になってウートガルズから出ようとするトール達はションボリしていました。
自分たちが恥をかきにきたと思っていたのです。
ウートガルザ・ロキは館の外までトール達を見送り、そこで口を開きました。
実は昨日繰り広げた戦いはウートガルザ・ロキが幻術を使ってトール達を退けたというのです。
ロキが争ったロギは野火だったので、骨も桶も焼き尽くせたのです。
シャールヴィと争ったフギは、ウートガルザ・ロキの「思想」だったのです。
流石のシャールヴィといえど、考える速度には敵いません。
トールが飲み干そうとしたお酒は「海」で、持ち上げようとした猫は「大蛇ヨルムンガンド」、相撲をとった老婆は「老年」だったのです。
ヨルムンガンドは以前ロキの記事で紹介をしましたが、ロキの子供で異形だったことから、海に投げ捨てられ、その後世界を囲うほどの大蛇に成長しています。
それらに、対してあれだけの奮闘ができたトール達は大したものだと。言いました。
さらにトールらがウートガルズに着く前に出会った、果てしもなく大きかったスクリュミルは、実はウートガルザ・ロキで、トールがミョルニルで打ち込む時は代わりに山に受けさせたというのです。
そう言って彼が指差した方向を見ると、山に三つ大きな、四角の谷ができています、これがトールの打撃の跡だと言うのです。
※画像はそのことを説明しているものだと思います。
つまり、初めからトールたちはウートガルザ・ロキの幻術にハマっていたのです。
これを聞いたトールはミョルニルをウートガルザ・ロキにくらわせてやろうと思いましたが、振り返ると既にウートガルザ・ロキの姿も館もありません。
草ぼうぼうの野原に取り残されたトールたちは、トボトボとアースガルドに帰りましたとさ。
チャンチャン♩
最後に
今回のエピソードは、結構長くて3回かかってしまいました。
ちなみに、今回のエピソードでトールが角杯(=海の水)をガブ飲みしたことが、潮の満干の原因になったと伝えられています。
今回の主役は一応トールだと思うんですが、終始巨人族のウートガルザ・ロキに翻弄された格好になります。
しかし、このウートガルザ・ロキという人物もその気になれば幻術を用いてトール達を倒すことが出来たように思うんですが、頭が良くて、幻術を使うということで魔法に長けている。
その上、トール達には無害・・・ということで、僕の中ではウートガルザ・ロキはオーディンが化けている説みたいなんがあります。
なぜなら、オーディンは他人になりすますエピソードが多く、別人としてトールの前にも現れるエピソードがあります。
そして、神々と巨人の最終決戦、つまりラグナロクを最も恐れるのが、このオーディンです。
ラグナロクを避けるという意味では、巨人族との争いは望んでないでしょうし、トール達が巨人族の都市を責めたら、それこそラグナロクのキッカケになりかねません。
なので得意の魔法を使って、トール達を惑わせた・・・のかな、という妄想です。(笑)
今回は少し長くなってしまいましたが、次回もトールの話です。
では、最後までお読みいただきありがとうございました。