和歌山県新宮市には「浮島の森」という通称の不思議な森があります。
正式名称は「新宮藺沢(いのさわ)-浮島植物群落」というらしく、泥炭でできた面積約5,000平米の沼の上に浮かんだ森です。
沼に浮いている森という時点でも珍しいのですが、寒暖両性の植物が自生しているということもあって、天然記念物に指定されています。
おいのと大蛇の伝説
冒頭で、浮島の森について、「沼の上に浮いていて、寒暖両性の植物が~・・・」と書きましたが、このスポットに興味があったのは見出しに書いている「おいのと大蛇の伝説」なんです。
この「おいのと大蛇の伝説」について簡単に触れておきます。
昔々、「おいの」という美しい娘がいましたとさ。
ある日、このおいのは父と一緒に薪を採りに島に渡りました。
そこで弁当の箸を忘れたことに気づいたおいの。
「いっけな~い♪ちょっと置くまでカシャバの木を採りに行ってくるわ」
といって一人で森の奥に入っていくおいの。
ところが、いつまでたってもおいのは帰ってきません。
心配になった父は、森の奥においのを探しにいきました。
すると、森の奥でおいのが一匹の大蛇に飲み込まれてしまいそうになっているではありませんか!
父は必至になって助け出そうとしましたが、そのままおいのは飲み込まれてしまい、大蛇は沼の底に沈んでいったとさ。
チャンチャン♪
ということで、おいのと父の危機管理力の低さが際立った伝説なのです。(嘘)
カシャバの木ってのはカシワだったりアカメガシワ、ホオノキの別名みたいです。
植物に疎いので、なんともコメントしづらいのだけど、おいのは木の枝を箸にしようとしたんでしょうね。
・・・だったら、森の奥にいかずともその辺に落ちていた木の枝でよかったんじゃない?(笑)
また、現地の案内板には「神倉聖の神聖な修行場だった」と書かれています。
神倉神社をWikipediaで調べると以下のような記述がありました。
Wikipediaより引用
平安時代以降には、神倉山を拠点として修行する修験者が集うようになり、熊野参詣記にもいく度かその名が登場する。『平家物語』巻10の平維盛熊野参詣の記事に登場するほか、応永34年(1427年)には、足利義満の側室北野殿の参詣記に「神の蔵」参詣の記述が見られる。
これから、このおいの伝説の舞台(時代)も平安時代だったのかな?と思われます。
また、これも現地の案内板に書いていたのですが、
「おいの見たけりゃ藺の沢(いのど)へえ御座れ(ござれ)おいの藺の沢の蛇のがまへ」
という俗謡があり、それを背景に上田秋成が「蛇性の淫」(雨月物語)として小説にしています。
といったことを書いていました。
雨月物語について
雨月物語って名前は聞いたことがあるんですが、調べたところ、江戸時代後期に上田秋成が書いた怪奇小説のようです。
角川ソフィア文庫から現代語訳付きのものが出ていたので、購入してみました。(Kindle)
で、早速読んでみました。
美男子の主人公が蛇の化身に見染められて、執念深く付き纏われるけど、最後は徳の高い道成寺の和尚さんに救われる。といった内容です。
この物語に出てきた蛇は、最後前述した和尚さんに封印されるのですが、それが道成寺にある「蛇塚」と書いていました。
まぁ「おいの伝説」ってよりは、「安珍清姫伝説」の別バージョンってカンジですよね(笑)
物語自体は面白くて雨月物語は短編集のような形式なので、また、この現代語訳が優秀なのか、すごく読みやすい印象です。
他の物語も今読んでいるところです。
浮島の森に行ってきた
とまぁ、おいの伝説と雨月物語のことはそれくらいにしておいて、浮島の森に入ってみました。
入場料は100円、安い!
中は写真のように散策道があって、それに沿って散策します。
前述したおいのが蛇に食べられた(引きずり込まれた)とされる蛇穴もあります。
流石にこの季節はジトジトしていて熱い!
ってことで割と足早に散策して撤収したカンジです。
けしてボリュームが大きいとは言えないので、近くの熊野速玉大社とか、他のスポットと組み合わせて行くのが楽しいかと思います。
僕があまり植物に興味がないのもあって、今回は完全に「おいの伝説」と「雨月物語」の話になってしまいましたが(笑)、沼に浮いた浮島ってのはとてもロマンを感じるスポットだと思います。
では、最後までお読みいただきありがとうございました。