イシュタルの冥界下り

どうも、元山狐(もとやまきつね)です。

以前4回に渡って「ギルガメシュ叙事詩」という物語を紹介しました。
↓の中にその記事へのリンクがあります。
メソポタミア神話関連の記事

この物語にはイシュタルという女神が登場しますが、あまり性格の良いところは見られず、邪悪な一面ばかりが切り取られて紹介されていました。
しかし、本来イシュタルは愛や豊穣の神格を持った尊い神です。

そんなイシュタルが登場する
「イシュタルの冥界下り」
という物語があります。

読んでみると、以前紹介した別の神話との類似性もあって、面白いな。と思い記事にしてみました。



登場人物

イシュタル


タイトルのとおり今回の主人公。

エレシュカギル

冥界を支配する神。
イシュタルの姉だが、姉妹仲は悪そう。

ナムタル

エレシュカギルの配下の死神。

エア神

ギルガメシュ叙事詩にも登場した、心の優しい神。

アスシュナミル

冥界に閉じ込められた、イシュタルを助けるためにエア神に作られた半神半人。

概要

ある日、尊い神イシュタルはふと
「冥界に行きたい」
と思いました。

※動機に関しては、タンムーズというシュメール神話のイシュタルの夫であり、植物の成長を司る神が、冥界に入り、戻ってこないのをイシュタルが、呼び戻しに向かった。
という説もあるようです。
こっちの方がしっくりくるかな。

思い立ったが吉日、早速イシュタルは冥界に向かいました。
門番は、イシュタルが来たことを姉のエレシュカギルに報告しました。

エレシュカギルはそれを聞いて
「ええ根性しとるやんけー。
うちらのやり方で歓迎したるわー。(#^ω^)ピキピキ」

と、門番に命じました。

冥界にたどり着くまでは、7つの門を通る必要があります。

1つ目の門で、門番は
イシュタルの王冠を取り上げました。

門番
「これがこの国の掟なのです。」

同じように、
第2の門で、耳飾り
第3の門で、首環
第4の門で、胸飾り
第5の門で、腰帯
第6の門で、腕環と足環
第7の門で、腰布

と取り上げられていき全裸にされたとか、全裸同然にされたとか。

しかし、全裸と考えた時に、脱がす順番がセンスないなぁ。
僕なら腕環と足環が最後の方がこうふ・・・まぁいいや。

そして、冥界の奥についたイシュタル。

姉のエレシュカギルは死神のナムタルに命じて、イシュタルを冥界に幽閉します。

イシュタルが冥界に閉じ込められて、地上に戻って来なくなったことで、地上には不毛の時代が訪れました。

作物の収穫が無くなり、嘆く人々。

それを見た心優しいエア神は、人々を救うためにアスシュナミルを創り、命を与えました。

エア神の命を受けたアスシュナミルは、死神ナムタルを倒し、イシュタルを地上に連れ戻します。
(アスシュナミルがイシュタルの身代わりとなり、冥界に残ったという説も。)

こうして、地上には実りが戻り、平和になりましたとさ。

めでたし、めでたし。

類似する神話

以前旧約聖書に関連して、元々カナンの人々に崇拝されていた神バアルについて記事を書きました。

(神?悪魔?)バアルについて

バアルは今となっては、ユダヤ教によって陥れられ、悪魔としての認識の方が広まっているようですが、ウガリット神話においては主たる尊い神です。

↑で紹介している記事には
「バアルとアナト」という物語のことを書いています。

バアルには豊穣の神としての一面があり、またバアルを冥界に救いに行くアナトは
「イシュタルの神格を継いだエジプト地方の神」
とされています。

この記事の「イシュタルの冥界下り」のあらすじで紹介した、

タンムーズというシュメール神話のイシュタルの夫であり、植物の成長を司る神が、冥界に入り、戻ってこないのをイシュタルが、呼び戻しに向かった。
という説もあるようです。

とも照らし合わせて、
タンムーズ=バアル
イシュタル=アナト
と置き換えると、かなり似ていると思います。

また、神が冥界に籠ることで不作となり、他の神々の働きによって呼び戻される。
という流れは、なんとなく古事記の天照大神の岩戸隠れにも共通があるような。

最後に

豊穣に対する感謝と希望を感じさせる話でしたね。
豊穣神に関する神話エピソードってのは、殆どの神話にあるので、比較しながら他の神話を読むのも楽しいかも。

ということで、久々にメソポタミア(シュメール)神話関連の記事を書きました。

では、最後までお読みいただきありがとうございました。