日本神話-17 ウミサチヒコとヤマサチヒコ-3

どうも、元山狐(もとやまきつね)です。

今回もウミサチヒコとヤマサチヒコのことを書いていきます。

シオツチの力を借りて綿津見神宮に行ったヤマサチヒコは、海神オオワタツミに気に入られ、娘のトヨタマビメと結婚しました。
宮殿で楽しく暮らしていたヤマサチヒコですが、兄とのことを思い出し、ため息をつきます。

そこでオオワタツミはヤマサチヒコの力になることにしました。


海にいる魚を集めて釣針を探し出す

オオワタツミは海にいる全ての魚を集めて、ヤマサチヒコが無くした兄の釣針のことを尋ねました。

魚たちから
「最近鯛が喉に骨が刺さって、物が食べられないと嘆いている。」
という情報を得て、鯛の喉を探ると、ウミサチヒコの釣針がありました。

こうして、あっけなく釣針は見つかり、ヤマサチヒコはウミサチヒコと仲直りして、兄弟仲良く過ごしましたとさ・・・。

とはいきませんでした。

オオワタツミは、お気に入りの婿に意地悪をしたウミサチヒコに悪い印象しかないのでしょう。
完全にウミサチヒコを懲らしめる気マンマンです。

オオワタツミは
「この釣針を兄上に返す時に『この釣針は、ぼんやりの針・猛り狂う針・貧しい針・役立たずの針』と唱えて返しなさい。
そしてウミサチヒコが高い所に田をつくったら、あなたは田を低いところにつくりなさい。
私は海の神で水を支配するので、兄の方が収穫がなく貧しくしてやりましょう。
そこでウミサチヒコが恨んで襲ってきたら、この塩盈珠(しおみちのたま、海を満潮にする力を持つ)で溺れさせ、謝ってきたら塩乾珠(しおひのたま、海を干潮にする力を持つ)を使って助けてやりなさい。」

と言いました。

渡す前の『この釣針は・・・』は言霊の力による呪いみたいなもんでしょうか?
アマテラスとスサノオの誓約(うけい)の時や、ニニギがコノハナノサクヤビメと結婚した時、コノハナノサクヤビメが子を生む時も言葉として発したことが現実になってますし、古代日本では言霊の力が結構な威力を持っていたのでしょう。

日本神話-6 アマテラスとスサノオ

兄弟喧嘩に決着が

オオワタツミの命で、和邇(わに)が一日でヤマサチヒコを兄のところまで送ってくれました。

因幡の白兎の記事にも出ていた和邇ですが、サメ、ワニ、ウミヘビ説などがあると書きました。
が、ここの描写からするとやはりサメが一番しっくりきますね。

日本神話-9 因幡の白兎

そして、ヤマサチヒコはオオワタツミの言う通りにしました。

するとやはりウミサチヒコは収穫がなく貧しくなり、恨みをもってヤマサチヒコを襲ってきました。

そこで、またオオワタツミの言う通り、塩盈珠を使って兄を溺れさせました。
すると兄は嘆いて許しを請いました。
するとヤマサチヒコは、塩乾珠を使って兄を助けました。

こうして懲らしめたところ、ウミサチヒコは謝って、今後はヤマサチヒコに服従することを約束しました。
ヤマサチヒコの子孫は天皇家、ウミサチヒコの子孫は薩摩(鹿児島県の西部)の隼人一族となったそうで、ウミサチヒコがヤマサチヒコに仕返しされて苦しむ姿を真似る様を「隼人舞」として伝え、仕えたようです。

トヨタマビメの出産

一方、ヤマサチヒコと結婚していたトヨタマビメは、すでに身ごもっていました。

彼女は、
「海原で天津神(ヤマサチヒコ)の子を産むわけにはいかない」
といって、自身で国を出てヤマサチヒコのもとにやってきました。

そこで、ただちにその海辺に産屋を作ることにしましたが、完成する前にトヨタマビメは産気づいて、産屋に入ることになりました。

トヨタマビメは産屋に入る前に、
「私が出産をしている間、私の姿を見ないでください。」
「絶対にですよ!」
「ネバエバですよ!」
「本当に絶対の絶対ですよ!」

と、ヤマサチヒコに言いましたが、これはこっそり覗いてバレるパターンです。(笑)

お約束どおりヤマサチヒコは、トヨタマビメの出産の様子を覗いてしまいました。
するとトヨタマビメは大きな鰐の姿(元々海の国の者で、これが国での元の姿)で、身をくねらせていました。

びっくりしたヤマサチヒコは、それを見て逃げてしまいます。
トヨタマビメは自分の姿を見られたことを知って、恥ずかしくなって生まれた子供を置いて、自分の国に帰ってしまいました。

そして、海と陸の境を閉じてしまいました。
(もう綿津見神宮には行けない)

生まれた子供は天津日高日子波限建鵜葺草葺不合命(アマツヒコヒコナギサタケウガヤフキアエズ)と名付けられました。
「海と陸の境で、産屋の屋根が鵜の羽で葺き終えないうちに生まれた、勇ましい子」という意味らしいですが、とにかく名前が長すぎます。(笑)
ので、ここはウガヤフキアエズと呼ぶことにします。

(後の)神武天皇誕生

トヨタマビメは、姿を見た夫のことを恨めしく思っていたようですが、憎んでいたわけでもなく、また子のことは気にしていたようで、妹の玉依媛命(タマヨリビメ)を送り、子を育てさせました。

そして、成長したウガヤフキアエズは、自分を育ててくれたタマヨリビメを妻にして、4人の子をつくりました。

  1. 長男 五瀬命(イツセ)
  2. 次男 稲氷命(イナヒ)
  3. 三男 御毛沼命(ミケヌノ)
  4. 四男 神倭伊波礼毘古命(カムヤマトイワレビコ)
    ※他にも別名がある。後の神武天皇)

次男のイナヒは、なき母を追って海原にいきました。
そして、三男のミケヌノは常世国(とこよのくに)に行った、とあります。参考書籍では「若くして死亡?」という風に書かれていました。

このシリーズの初回で、
「古事記は上・中・下の三巻から構成されています。」
といったことを書きましたが、上巻がここまでになります。

日本神話-1 天地開闢

で、残った長男イツセと四男カムヤマトイワレビコが、中心となって中巻に入っていくわけですね。

では、最後までお読みいただきありがとうございました。