ギリシア神話-30 英雄ヘラクレスと10の難業(4)

どうも、元山狐です。

今回もヘラクレスと10の難業について書いていきます。

前回アルテミスの聖獣で、足の速いケリュネイアの牝鹿を生け捕りにすることを命じられたヘラクレス。

難業では初めての捕獲ミッションということで、特に命の危険が迫るようなシーンはありませんでしたが、かなりの苦戦を強いられ、 1年間もの時間をかけてそれを達成しました。

それに味をしめた(?)エウリュステウスは、次の難業も捕獲を命じることにしました。




捕獲対象

第4(第2の難業がノーカウントとされたので、そう言う意味では第3)の難業として、エウリュステウスがヘラクレスに命じたのが
「エリュマントス山に住む猪を捕まえてこい」というものでした。

鹿の次は猪かいな!?

この猪はエリュマントス山に住み、田畑を荒らしたり、人を襲ったりする大猪です。

今まで戦った怪物(ライオンやヒュドラ)に比べると、少しインパクトにかける気がしますが、敢えて「退治」ではなく「生け捕り」としたことで、難業としての難易度を上げたのでしょうか。

ケンタウロス達との争い

エリュマントス山に向かう途中で、ヘラクレスはポロスというケンタウロスと出会います。

このポロスは、野蛮と言われているケンタウロス族の中でも珍しく温和で優しい性格をしていて、ヘラクレスを歓迎して宴を開いてくれました。

ここまでで、じゃあなんで争いになるの?って思うのですが、宴の中でヘラクレスはお酒を呑みたくなりました。

そしてポロスは酒の神ディオニュソスから授かった酒を持っていました。

※ディオニュソスについては↓の記事も併せて読んでいただければ、と思います。

ギリシヤ神話-13アテナ・ディオニュソス・ヘルメスについて

ただし、この酒はケンタウロス族達の大切な酒でして、宝といっても差し支えない位のものでした。

しかし、ポロスが止めるのも聞かず、ヘラクレスは無理矢理この酒を飲んでしまいます。
ヘラクレスって所々でこういう粗野な所が露見しますね。

それを知ったケンタウロス族達は激怒して、ヘラクレスに襲いかかってきました。
って、どうやって知ったんだろう?
その場(宴)にいたのかな。

ヘラクレスは木を燃やして投げつけたり、ヒュドラの毒を塗った矢でそれに応戦しました。

って、殺す気満々やないかい。笑
謝るなどして、和解って方向があっても良さそうな気がしますが、ディオニュソスの酒は人を怒りで狂わせることもあるので、争いが激化したのかも知れません。

そして逆にケンタウロス達はヘラクレスの武力に追い詰められてしまい、ケイロンというケンタウロスの元まで逃げていきます。

実はケイロンは以前の記事に登場していまして、ヘラクレスに武術と馬術を教えた、言わば師匠なのです。

ギリシア神話-24 英雄ヘラクレスの誕生とヘラの迫害

しかし、それを知ってか知らずか、怒りの戦闘モードのヘラクレス。
ケンタウロス達に追い打ちをかけるように、ヒュドラの毒を塗った矢を放ちます。

すると、こともあろうか、その矢がケイロンの膝に命中してしまいます。

こんなカンジ?

ヘラクレス
「あ、師匠」

師の安楽のために

ケイロンは、ゼウスの前に神々の王として君臨していたクロノスの子で不死でしたので、ヒュドラの毒を持ってしても死ぬことはありませんでした。

↓クロノスについては、こちらの記事で紹介をしています。

ギリシヤ神話-5 新たな王クロノス

しかし、死なないとは言えヒュドラの猛毒は大変な苦痛をケイロンを与えました。
そして、その毒の痛みが引くことはないのです。

苦痛から逃れる為には死しかありませんでした。
で、不死身の能力を放棄したいわけですが、ちょっとここからがややこしくて申し訳ないのですが、

不死から逃れるために、ケイロンはプロメテウスに不死を譲った説。
プロメテウスが開放されるには不死の者の死が必要だった説。

とかいろいろ説があるのですが、端的には
ヘラクレスは師ケイロンの安楽(死)の為に、コーカサス山に行き、プロメテウスを開放した。
ということになっています。

いろいろ調べたんですが、自分的に腑に落ちる説が見つかりませんでした。

↓プロメテウスについては、こちらの記事で紹介しています。

ギリシヤ神話-17プロメテウスについて

この記事では以下のように書いています。

プロメテウスはゼウスの怒りを買い、コーカサス山に縛り付けられ、毎日肝臓をハゲタカについばまれるという残酷な計に処されることになります。

普通ならあっという間に死に至りますが、プロメテウスもまた不死のため、夜中のうちに肝臓は再生します。

再生→ついばまれる→再生→ついばまれる・・・こんな拷問が3万年近く続いたと言われています。

つまり、この件がある前からプロメテウスは不死だった。ということになります。

また、プロメテウスが開放されるには不死の者の死が必要だった説。

正直「なんじゃそのよくわからん設定w」って思うんですね。

とりあえず結果として、ケイロンは死んで、プロメテウスは開放された。(ゼウスと和解もした)
と、いうことですね。

我ながら歯切れの悪い説明になってます・・・。

ここからは、僕の妄想なんですけど。

ケイロンはクロノスの息子、プロメテウスはクロノスの甥ということで、両者には面識があり、親しい仲だったのかも知れません。

そこで、ケイロンはヘラクレスにゼウスへの言付けを依頼した。
「自分を不死の能力から開放して欲しい。そして、プロメテウスを開放してやって欲しい。」

で、ゼウスはケイロンに対して我が子(ヘラクレス)の師という恩もありますから、それを聞き入れた。と。

実はケイロンは死後、ゼウスによって射手座とされていまして、ゼウスとケイロンの間には一定の親しみや尊厳があったんじゃないかな。とも思うんですよね。

ちなみに、ヘラクレスを歓迎したポロスですが、この騒動の間で、ヘラクレスの矢(毒矢)が屈強なケンタウロスたちをバッサバッサ倒すのを不思議に思って、矢を抜いて見ていたところ。
うっかり自分の足に落としてしまい、毒で死んでしまいます。

・・・。

そんなポロスですが、後にケンタウロス座として天に上げられたとされています。

で、難業の方は

ヘラクレスはこの後、エリュマントス山に向かい、難なく猪を捉えました。

そして、報告の時、エウリュステウスは猪にびびって、以前紹介した大き甕(かめ)に入って怯えましたとさ。

ちゃんちゃん♪

最後に

今回は難業というより、ケンタウロス族とプロメテウスの件がメインみたいになっちゃいました。

難業自体は数百文字で終わりそうなくらい薄いですし。笑

ちなみに次の難業は「掃除」です。
家政婦か!?

参考にしている書籍では、難業の一つ一つの扱いが軽いのですが、気になる周辺情報を調べながら盛っていくと結構なボリュームになりそうなので、恐らくは次回も1つの難業を紹介する格好になると思います。

では、最後までお読みいただきありがとうございました。