ギリシア神話-33 英雄ヘラクレスと10の難業(7)

どうも、元山狐です。

今回もヘラクレスの10の難業について書いていきます。

今回エウリュステウスがヘラクレスに命じたのは
「クレタの牡牛を捕らえ連れてくること」
です。

書いていると、難業自体は特に目を見張る部分はなかったのですが、周辺情報を見てると結構面白い、というかツッコミどころがありました。

また、今回登場する人物の一部は、ヘラクレスの後に紹介する予定の英雄テセウスに絡む格好で、再登場する予定です。




今回のターゲットは

前述で書きましたが、今回の命は
「クレタの牡牛を捕らえ連れてくること」
です。

この牛は、クレタのミノス王のものと言われているのですが、調べていると色々とエピソードを持った牛のようです。

クレタのミノス王と牡牛について

まず、牡牛に触れる前に、所有者であるミノス王について紹介しておきます。

彼は、神々の王ゼウステュロスの王女エウロペの子になります。

ゼウスとエウロペの馴れ初めですが、ゼウスの恋路らしいというか、ぶっ飛んでいます。

ミノス王の出生エピソード

エウロペはとても美しい女性でした。

彼女を見たゼウスは、一目で恋に落ちてしまいました。

そこで、今回のゼウスの恋の作戦が始まりました。

まず、ゼウスは白い牡牛に変身しました。

そして、侍女らと花を摘んでいるエウロペに近付きました。

エウロペはゼウスが変化した牛を見て、跨りました。

見知らぬ野生の牡牛がいたら逃げるだろうよw って思うんですが、この時代では「牛を見たらとりあえず跨ってみろ」みたいな風潮があったんでしょうか。

エウロペを乗せた牛(ゼウス)は彼女を乗せて海を渡り、クレタ島に連れ込んで3人の子を作りました。

なんか乗物(車とか)で女性を釣って、ホニャララに結びつける展開って漫画とかアニメであると思うんですが、それの匂いを感じます。(笑)

そんな3人の1人がミノス王なのですが、母親が牛と只ならぬ関係だったからか、彼も牛には只ならぬ執念があるようです。

ちなみに、ゼウスが化けた牡牛ですが、その後空に舞い上がり、おうし座になったとあります。

なんでだろう、これもなんかしっくりきませんね。
しかしWikipediaによるとメソポタミア神話の神アヌの牡牛という説も書かれています。

アヌは以前書いた「ギルガメシュ叙事詩」に登場し、女神アルル野人エンキドゥを作らせました。

ギルガメシュ叙事詩-1 暴君ギルガメシュと野人エンキドゥ

また、アヌの牛もギルガメシュ叙事詩の中で、ギルガメシュと敵対する格好で登場しています。

ギルガメシュ叙事詩-3 ギルガメシュと女神イシュタル

ケルト神話でも「クーリーの牛争い」というエピソードがありましたし、牛は神話に登場する率が高いですね。

ケルト神話について-10 クーリーの牛争い(前編)

クレタの牡牛について

では、ミノス王が所有する牡牛について紹介します。

ミノスがクレタの王になろうとした時、周囲はそれに反対しました。

その際に、ミノスは
「神々からクレタを授けられた」
と主張して、証拠として、
「私が望めば、いかなる願いも神に聞き入れられるであろう」
と言って、神々に立派な牛を願いました。

早速牛に対する執着心が出てまいりました。(笑)

すると、ポセイドンが海底からそれはそれは立派な牡牛をミノスに送りました。

それを見た民はミノスを王として認めたそうです。

と、まぁここまでなら、特別変わった様子もない牛に思うんですが、ってまぁ海底から送られた牛って時点でかなり変わってるんですが、そこは目を瞑ってください。

実は神に牛を願った時に、ミノスはその牛を神に捧げると約束していたんです。
※捧げるというよりは、返すって方が近いかも。

しかし、この牡牛があまりに立派で美しかったので、ミノス王は牛を返すのが惜しくなってしまいました。

そこで、別の牛を捧げたのですが、当然ポセイドンは激怒!

大洪水を起こしてクレタ島を海の底に沈めてしまいました・・・という直接的な報復はしませんでした、兄ゼウスの子ということが大きかったんでしょう。

ポセイドンがとった報復とは!

  • 牡牛を凶暴化
  • 妻のパシパエに牡牛に対する異常な恋心を植えつけた

なんかポセイドンらしからぬ、遠回しな報復ですね。

しかし、牛は凶暴化して街を荒らしますし、結構な被害が出たようです。

パシパエと牡牛の恋

直接難業とは関係ありませんが、ここも面白いので紹介しておきます。

ポセイドンによって、牡牛に対する恋心を植えつけられたパシパエ。

実はパシパエ自身も神の血を引く者で、不死だったとも言われていたり、有名な魔女キルケーの兄弟で魔術に優れていたらしく、取り上げると面白そうなのですが、今回は控えておきます。

※キルケーについては以前「怖い絵展」の記事と、影響を受けたであろう「高野聖」という小説の記事で軽く触れています。

「怖い絵」展に行ってきた。(兵庫)

泉鏡花 「高野聖」について

彼女は
「うーん、あの牡牛と交わりたい!」
と欲情しました。

そこで、工匠のダイダロスに木に皮を貼り付けて、中を空洞にした牝牛の像を作らせました。

はい、ここで問題。
パシパエはこの像を使って何をしたのでしょう?

答え
馬の像を牧場に運び、中に入って、牡牛と交わりました。

積極的・・・を通り越してヒキました。(笑)
ゼウスよりも変態的じゃん。

ともあれ、牡牛と交わったパシパエは身籠りました。
そうして生まれたのがギリシア神話でも有名なミノタウロスという頭が牛で体が人という怪物です。

当然ミノス王は激怒しましたが、パシパエの子を殺すわけにもいかず、ダイダロスに迷宮を作らせて、そこにミノタウロスを幽閉しました。

この後日談も面白いのですが、これ以上書き出すと、こっちがメインになりそう(というか既になってるか?)ですし、ミノス王やミノタウロス、ダイダロスはまた別の英雄テセウスのエピソードで再登場しますので、今回はこの辺りにしておきます。

ヘラクレスの難業

正直クレタの牡牛より、周りの人物のインパクトの方が強いんですが、この記事はヘラクレスの難業を紹介する記事なので、本題に戻ります。

まず、ヘラクレスは牡牛を捕らえるのに苦戦を予想してミノス王に協力を求めます。

しかし、ミノス王は
「一人でやれば〜?
と、協力してくれませんでした。
※妻やミノタウロスのこともあって、これ以上牡牛と関わりたくなかったのかも。

仕方なく、ヘラクレスは牡牛と格闘し、そしてなんとか捕らえエウリュステウスの元に連れて行きましたとさ。

・・・以上です。(笑)

最後に

その後の牛ですが、エウリュステウスの元から脱走して各地で暴れ回り、被害を出しましたが、後に英雄テセウスによって退治されたそうです。

テセウスについては、紹介していくのはまだ先の話になりそうです。

では、最後までお読みいただきありがとうございました。