ギリシア神話-47 英雄オイディプスと父ライオス王

どうも、元山狐です。

今回からオイディプス王を紹介していきます。

オイディプスに関しては、英雄というよりは王という紹介のされ方が多く「エディプスコンプレックス」の語源にもなっています。

彼はテバイの伝説的王です。

知らずのうちに父を殺し、知らずのうちに母と交わり子を作り、子は王位継承を争い、結果国が滅びる。という流れの悲劇が有名ですが(っていきなり壮大なネタバレしてますが笑)、スピンクス退治のエピソードなんかもあります。




テバイ王ライオスの呪われた運命

テバイの王ライオスは
「息子をもうけると、将来息子に殺される」
と呪いを受けていました。

ライオスが呪われた原因は、遡って書く必要があって、書き出すと長くなるので詳細は省きますが、テバイの王になる前に事情があってピサという国に亡命し、そこでピサの王ペロプスに厚くもてなされたのですが、男色家でもあったライオスはペロプスの息子クリュシッポスを力強くで辱め、クリュシッポスは恥に耐えられず自害してしまいました。

「こりゃヤバイや」
ということで、ライオスはテバイに逃げるように帰るのですが、当然ペロプス王は大激怒。

そこで、ペロプス王が前述の呪いをかけたとか、神にライオスのことを祈り、神託として呪いが課せられたとか。

この運命を恐れたライオスは、妻のイオカステと夫婦の営みをすることはありませんでしたが、ある晩に酒に酔って妻と交わり、結果、男の子が生まれてしまいました。

神託を恐れたライオスは我が子を殺す・・・ことを躊躇い、従者に命じて赤子をキタイロン山に捨てさせることにしました。

キタイロン山といえば、ヘラクレスがライオンを倒した山ですね。

ギリシア神話-25 英雄ヘラクレスの黒歴史


※位置はかなり大雑把ですが、青い丸がテバイで、三角がキタイロン山です。

捨てるにしては、テバイから近すぎる気がしますが、まぁ赤子ですし、危険な野に放たれればすぐに死ぬと考えたんでしょう。

が、しかし!
この手の話は、物語の中心が人間になる以前から結構出てましたよね。
クロノス、ゼウスもそうだし、子ではないにしろアルゴスの王アクリシオスは「孫に殺される。」ってのがありました。

ゼウス以外は神託どおりとなるのですが、最大の原因は詰めが甘いことだと思います。

今回のライオスに関してもそう思うんですが、まぁこのまま話を続けます。

とりあえずライオスの印象は、今のところ全くもって良いところがありません。
よくそんなんで王になれたな・・・ってカンジです。

しかし、赤ん坊は生き延びた

ライオス王の詰めの甘さは、オイディプスを生かしておいたことだけではありません。

子を殺す。という汚れ仕事を人任せにしたのも良くなかったのです。

と、いうのはライオスから命を受けた従者は自分の手で子を捨てることを躊躇い、キタイロン山に住む羊飼いに赤子を遠くに連れて行くように命じました。

そして、羊飼いは赤子を子が出来ないことで悩んでいたコリントスの王に献上します。


※先ほどの地図と同じもので、赤い丸がコリントスです。

確かにコリントスはテバイからはキタイロン山よりも遥かに遠いし、
「遠くに連れて行け」
と言われたので、羊飼いは全く間違ったことをしてません。

こうして、ライオス王の意思とは違う方向になり、赤子はオイディプスと名付けられ、育てられることになります。

コリントスといえば、イアソンがイオルコスを去った後に身を寄せた国ですね。

ギリシア神話-43 英雄イアソンに向けられる愛憎

オイディプスの旅立ち

コリントス王ポリュボスと王女メロペは、オイディプスを愛情かけて育てました。

ちなみに「オイディプス」とは「踵が腫れた者」らしく、ライオスが従者に渡す際に赤子の踵を金属で貫いたんですが、それを取り除いても踵の腫れがひかなかったからだそうです。
(・・・なんか本当に愛情を持って付けられた名前なんかな〜?って気がせんでもありません。笑)

そして、誰よりも逞しく強い青年と成長したオイディプスは、あらゆる分野の競争で他者を引き離しました。

しかし、妬みというのはあるもので、ある時大差を付けて引き離された競争相手が
「お前は本当の王の子ではない!」
と心無いことを言ってきました。
※ただの妬みで言ったとは思うんですが、正解です。

そこで無視すればいいものを、それが気にかかったオイディプスは母メロペに真偽を確かめようとしましたが、中々納得のいく回答が得られません。

納得のいかないオイディプスは、真実を知るため神託の神アポロンがいるデルポイを目指し旅に出ました。

そういえば、ヘラクレスもデルポイでアポロンの神託を求めていましたね。

当時困ったらアポロンの元へ。ってのが定着してたんでしょうか。
アポロンさんも大忙しでしょうね。

ギリシア神話-26 英雄ヘラクレスとエウリュステウス

アポロンの神託

テバイからキタイロン山。
キタイロン山からコリントス。
そしてコリントスからデルポイ。

段々と移動距離が伸びて行くオイディプス。
こうやって見ると、テバイからキタイロン山に赤子を捨てに行くって、のび太君が0点のテストを裏山に埋めに行くのと同じ感覚のように見えてきます。笑

遠い旅路で特にこれといったこともなく、無事にデルポイに到着します。

そこで、アポロンに神託を求めるのですが、アポロンはオイディプスが求めていることとは別のことを告げます。
「故郷に帰ってはいけない。両親を殺すことになるぞ。」
と。
なんでこんな言い方をしたんでしょう。

ここで、両親の真実を告げておけば、この後に起こる未来も変わっていたと思うんですが、テバイ自身がカドモスという英雄を祖としているんですが、神々との因縁もあり、伝わっている秘宝に神の怨念が込められたりしています。(詳細は長くなるので書きません。)

この時代は、以前書いた人間の時代でいうところの「英雄の時代」になります。

で、英雄の時代は激しいテバイの戦争や、今後書いていくトロイア戦争で終わりを迎えるのですが、この時点で「終わりへの始まり」みたいなものが動き出していて、
「まず手始めに呪われた都市テバイから。」
という、神々の魂胆もあったのかも知れません。

ギリシヤ神話-16神々と人間について

話をもとに戻しまして、これを聞いたオイディプスは、故郷=コリントスで、両親=ポリュボス王とメロペ王女だと思ってますし、愛情かけて育てられた恩を感じていたんでしょう。

「では、2度とコリントスには戻るまい。」
と誓い、コリントスに向けるはずだったその足を別の方向に向けることにしました。

呪いが実現してしまう

故郷(と思っている)コリントスには戻れなくなったオイディプス。

彼は新天地としてテバイを選びました。
その道中で、運命の出来事に遭遇します。

前方から従者を伴った、戦車がやってきました。
そして主らしき老人が、横柄な態度で
「道をあけよ!」
と言ってきました。

それに従わないと見るや、従者がオイディプスの乗っていた馬を殺してしまいました。

それに腹を立てたオイディプスは、従者と老人を殺しました。

この老人こそは実の父ライオスとは知らず。
更に逃げた従者が、かつて自分を捨てようとした男とも知らず。

従者は1人逃げ帰って、
「山賊に襲われて、自分以外は殺されてしまった。」
と嘘の報告をしました。

王の急死。
さらにライオスには息子がいない(ことになっている)ので、妻のイオカステの兄弟クレオンがテバイの王となりました。

こうして、オイディプスからしたら、全くの他人事と思われた出来事が、実は知らずの間に父親殺しの罪を負うことになっていたのです。

オイディプスの波乱の人生はテバイに入ってから、更に激しさを増すことになります。

最後に

オイディプスのエピソードもイアソンや、テセウスと同じく3回くらいで紹介しようと思ってます。

今更気づいたんですが、テバイの祖となった英雄カドモスには触れずにここまで来ていたのを、この記事を書いて気付きました。笑

が、ちょっと今更間もありますし、エピソードが若干イアソンと被る部分もありますので、一旦ギリシア神話シリーズを終えてから、機会を見つけて紹介しようと思います。

では、最後までお読みいただきありがとうございました。